準危険運転罪の創設


準危険運転罪の創設 遺族「厳罰化は当然」

  1. 2012年9月4日
  2. 無免許運転や飲酒運転などによる重大事故が相次いでいることをふまえ、「準危険運転致死傷罪」の創設など罰則の強化が検討されることになった。現在の危険運転致死傷罪では、最高で懲役20年が科されるが、適用のハードルが高く、構成要件の見直しを求めていた事故の遺族からは「厳罰化は当然」との声が上がっている。
  3. 京都府亀岡市で今年4月、軽乗用車を無免許運転していた当時18歳の少年が集団登校の列に突っ込み、児童ら10人が死傷した事故では、危険運転致死傷罪の適用が見送られ、自動車運転過失致死傷罪などが適用された。
  4. 長女の○緒さん(当時8歳)を亡くした○山○史さん(38)は、「無免許運転で人を死なせたことが、なぜ『過失』なのか。悲惨な事故を取り締まる法律が、私たちの感覚からはかけ離れていると痛感してきた」と語る。○村○姫さん(当時26歳)を亡くした、父の○江○則さん(49)は「これほど短い時間で、罰則強化が具体的な検討に入ったのは本当にうれしい」と語った。
  5. 栃木県鹿沼市の国道で昨年4月、登校途中の児童6人がクレーン車にはねられ死亡した事故でも、運転手の男(当時26歳)に対し、危険運転致死傷罪の適用が見送られた。亡くなった○野○斗君(当時11歳)の父・○則さん(43)は、準危険運転致死傷罪創設の検討が始まることについて、「構成要件にあいまいさを残さず、分かりやすくすることが重要だ」と注文をつけた。

【準危険運転罪】民意踏まえ冷静な議論を

  1. 2012年09月06日
  2. 悪質な運転による交通事故の罰則を強化するため、滝実法相が「準危険運転致死傷罪」の創設の検討を表明した。7日の法制審議会に罰則の見直しを諮問し、来年の通常国会への法案提出を目指すという。
  3. 京都府亀岡市で4月、集団登校中の児童らの列に軽乗用車が突っ込み、10人が死傷した事故などを受けた。無免許で運転していた少年に、より罰則の重い危険運転致死傷罪の適用が見送られ、遺族らの間で適用要件の緩和などを求める声が高まっている。
  4. 民意を踏まえながら、法律適用の在り方そのものを見直す機会としたい。
  5. 危険運転致死傷罪は、本県の大型トラックが東名高速道路で車に追突、幼児2人が死亡した飲酒運転事故などをきっかけに2001年に施行された。
  6. 死亡事故の最高懲役は20年で、自動車運転過失致死傷罪の7年、業務上過失致死傷罪の5年に比べ重い。それだけに酒や薬物の影響のほか、制御が困難な高速度や運転技能がないことが求められるなど適用のハードルは高い。
  7. 亀岡市の事故では、少年が過去に無免許運転を繰り返しており、運転技能を持っているなどとして、適用が見送られた。
  8. この理屈でいけば、無免許運転を重ねた方が結果的に厳罰の適用を免れることになりかねない。
  9. 危険運転致死傷罪の適用を求め、事故の遺族らが行った署名活動に20万人以上が協力したのも、適用の実態に違和感を持つ国民が少なくないことの表れといえる。
  10. 罰則の強化には、遺族が求めているように、危険運転致死傷罪の構成要件に無免許運転を追加するほか、自動車運転過失致死傷罪の量刑の引き上げなどいくつかの選択肢がある。
  11. だが、法務省内には無免許運転などを要件に追加するのは困難との意見が強いようだ。罰則が重いだけに、構成要件の拡大には慎重さも求められる。
  12. 危険運転致死傷罪と、自動車運転過失致死傷罪との間に、準危険運転致死傷罪を設けることは、現実的な選択肢として、議論の広がりも期待できよう。ただし、遺族の間には「罰則が複雑になり、分かりにくくなる」との懸念もある。こうした声にどう応えていくかも問われてくる。
  13. 悪質な運転による悲惨な事故は繰り返されており、私たちはいつ被害者になるか分からない。事故の抑止力となり得るような法改正が望まれる。